移住先として人気の温泉リゾート地「熱海」をエリア別にご紹介。

コロナ禍で熱海の物件の人気が高騰

海と山に囲まれ、良質な温泉も湧く日本有数のリゾート地、熱海。旧くから観光で栄えてきた街ですが、近年のコロナ禍を受けて移住先やテレワークの拠点としても注目されています。その人気の秘密は、なんといっても都心へのアクセスの良さ。新幹線を使えば、品川駅まで30分程度、東京駅まで40分程度で行くことができます。また、温泉付きのリゾートマンションや海を望める眺望の良い別荘など魅力的な不動産が多いことも理由。さらに、コンパクトな街なので徒歩圏で生活が成り立つというメリットもあります。

筆者自身、5年前にリゾートマンションを購入して、東京から熱海へ移住。都会の喧騒を離れ、豊かな自然と温泉、そして地域に密着した暮らしを満喫してきました。この記事では、筆者の経験も踏まえながら、熱海への移住を考えている人に向けて、耳寄りな情報をお届けしていきます。今回は「熱海の地理と各エリアの特徴」について掘り下げていきたいと思います。

急峻な地形が生み出す独特の景観

本題に移る前に、まずは熱海の地理や気候について把握しておきましょう。熱海市は静岡県の最東部の街で、伊豆半島の付け根に位置しています。伊豆半島は約60万年前に沖合にあった火山島が本州に衝突してできたとされており、そのため急峻な地形が特徴となっています。熱海市も地形は非常に急峻で、平地は少なく、丘陵地が多くを占めています。ある調査によると、市街地における斜面の割合が50%以上で日本一なのだとか。しかし、この特徴的な地形が、熱海ならではの魅力的な景観を作り出していると言えるでしょう。

快適な移住生活を送りたいなら、気候も気になるところです。熱海というと一年中暖かいイメージがありますが、年や月によって異なるものの、夏場は東京に比べて気温が低く、冬場は気温が高いという傾向が見られます。筆者の体感ですが、夏場の熱海では海風が吹いて多少涼しさを感じたものの、東京へ出るとモワッと蒸し暑さを感じることも多くありました。都会に比べて風通しが良く、熱がこもりにくいこともその理由かもしれません。冬場は氷点下になることは少なく、丘陵地では路面が凍結したり降雪する所もありますが、平地の周辺では雪が降ったり積もったりすることは滅多にありません。

エリアによって特色が異なる熱海

熱海市の地理・気候をおおまかに把握したところで、熱海の各エリアについて解説していきましょう。熱海とひと口に言っても、いくつかのエリアに分かれており、それぞれに特徴があります。自分のニーズに合ったエリアを選ばないと、意外に不便を感じたりして後悔する可能性もあるので気をつけましょう。

市街地エリア

観光客でにぎわう熱海の中心地

まずは熱海の市街地エリアです。熱海駅から海沿いにかけて広がっている熱海の中心地で、多くの人が温泉観光地としてイメージするエリアです。駅からは2本のアーケードが伸びており、多くの土産物店や飲食店が立ち並びます。また、随所にホテルや旅館があり、レトロな街並みと相まって温泉街の風情を漂わせています。平地には目抜き通りである熱海銀座商店街があり、多くの観光客で賑わっています。また、海水浴ができる熱海サンビーチ、パワースポットとして知られる来宮神社、熱海のシンボルにもなっている熱海城など、観光スポットも点在しています。観光客向けの施設やお店が多いものの、大型のショッピングモールやホームセンターなどもあるため、生活するのに不便ということはありません。

平坦地であり、生活にも便利なことから、居住エリアとして人気が高いのは言うまでもありません。しかし、平坦地の範囲が限られているうえ、商業ビルが密接して立ち並び、地元住民の住宅も多くあるため、余裕を持って戸建を建てられるような土地を見つけるのは困難です。戸建てを手に入れたいなら中古住宅を探すか、少し離れた傾斜地で物件を探すことになるでしょう。

リゾートマンションなら便利で景観が良く温泉も付く

市街地エリアで快適に暮らすなら、やはりおすすめなのがリゾートマンションです。駅近や中心部に近い場所など好立地に建っているリゾートマンションも少なくありません。仕事で東京に行くことが多い人や、市街地で気軽に食事やお酒を楽しみたい人には最適です。しかも、基本的に温泉付きなので、毎日温泉に浸かるという贅沢を味わうこともできます。マンションによっては、プールやジム、カラオケルームなどの施設が付いていることも。さらに、部屋によっては絶景のオーシャンビューを見渡すことができますし、年に十数回開催される熱海海上花火大会を自宅のテラスから堪能することもできます。

熱海のリゾートマンションは、これだけの魅力がありながら、都心のマンションに比べると破格の値段で売り出されています。私の場合、駅近で温泉付きの2DKのマンションを1500万円程度で購入しましたが、当時、都心の同程度の間取りの物件を調べたところ、相場はおよそ3000〜4000万円でした。しかし、近年のコロナ禍を受けて、熱海では不動産バブルが起きており、マンション価格が高騰しているうえ、物件数も少なくなっています。とはいえ、都心の物件に比べれば、割安な物件を見つけることは可能でしょう。しかし、安く感じたとしても実際は急な坂を登らないといけなかったり、老朽化が進んでいたりする場合もあるので、現地に足を運んでしっかり物件を見極める必要があります。また、温泉などの付帯施設の維持費のため、都心のマンションよりも管理費が割高であることも多いのでよく確認しておくことをおすすめします。

伊豆山エリア

自然豊かで落ち着いた環境

熱海駅から湯河原方面にかけて広がるのが伊豆山エリアです。日本三代古泉の一つに数えられる「走り湯」を源泉とする伊豆山温泉や源頼朝ともゆかりのある伊豆山神社があることで知られています。熱海駅からは距離があるうえ、ほとんどが傾斜地なので、市街地や駅からの移動はバスや車を使わないと厳しいでしょう。場所にもよりますが、車で10分程度はかかります。しかし、その分、自然が豊かで落ち着いた街並みであるため、喧騒を離れてゆっくり過ごしたい人にはおすすめです。傾斜地が多いため、オーシャンビューの物件が多いのも魅力。リゾートマンションも点在しています。近年、土石流災害がありましたが、傾斜地が多いだけに、物件を選ぶ際にはハザードマップを確認しておくことをおすすめします。

南熱海エリア

子育てにも適した熱海のベッドタウン

熱海市の南部に広がる南熱海エリアは、大きく多賀と網代という2つの地域に分かれています。熱海駅からJR伊東線を使って行くことができ、多賀エリアは2駅先の伊豆多賀駅、網代エリアは3駅先の網代駅が最寄駅になります。車では熱海駅から15分から20分ほど。市街地エリアとは異なり、ホテルや飲食店は少なく、のどかな住宅地といった雰囲気です。そのため、熱海のベッドタウンとしても機能しています。

多賀エリアには、保育園、幼稚園、小中高校があり、近くに海水浴場と大型遊具を備えた長浜海浜公園もあるため、子育て世代にも最適です。他の地域と同様に平坦地は少ないですが、それほど建物が密集していないため、広めの土地も見つけることができるでしょう。リゾートマンションは市街地エリアに比べると少なめです。

網代エリアは江戸時代に海運の要衝としてにぎわった街。網代漁港や干物屋が立ち並ぶ通称“干物銀座”があるなど、今も漁師町の趣きが残っています。また、網代温泉が湧いており、日帰り入浴を楽しむこともできます。

多賀と網代の間には、テニスコートや体育館を備えた運動施設があるのでスポーツを楽しみたい人にはうってつけ。海に近いので釣りも楽しめます。

泉地区

泉地区は静岡県と神奈川県の県境に位置しており、湯河原町に隣接しています。熱海中心部とは山で隔てられており、最寄駅は湯河原駅で生活圏も湯河原がメインになります。熱海駅からは車で15〜20分ほど、湯河原駅からは車で10分ほどかかります。大きめの中古戸建てや温泉引き込みが可能な分譲地もあるため、戸建志向の人には適しているでしょう。

別荘地

上記でご紹介したエリア以外にも、熱海自然郷別荘地、西熱海別荘地といった分譲の別荘地が点在しています。いずれも車で10〜20分程度と中心部からははずれたところにありますが、バスが運行していますし、自家用車があればさほど不便は感じないはず。別荘利用だけでなく、定住している住民も少なくありません。

まずは現地へ足を運んでみましょう

ここまでお読みいただいて、熱海という街のイメージが何となく掴めてきたでしょうか? 馴染みのない土地に移住する時は、立地や周辺環境をしっかり確かめておきたいもの。ましてや、熱海は観光地であり、傾斜地が多いという特徴があるため、住むエリアによって環境や利便性が大きく変わります。子供の教育を考えるなら学校や公園が多い地域、便利に生活するなら役所や病院、スーパーが近い地域など、移住の目的に応じた最適なエリアが絞られてくるはずです。まずは移住する前に何度も現地に足を運んで熱海を散策し、土地勘を養うことから始めてみてはいかがでしょうか。